山や階段をイメージしてほしい。
下りだからと行って身体への負担が軽くなるわけではない。とりわけ股関節や膝関節が弱くなる中高年層にとっては下りもきつい。そして日本の人口構成はまさに中高年層が大きな比率を占めているのだ。
ところが公共交通機関においてこのことが余り理解されていないようだ。とりわけ地下鉄の駅には登りエスカレーターは手厚く整備されているが、下りエスカレーターを軽視している駅がしばしばみられる。
例えば浅草線の高輪台駅や大江戸線の麻布十番駅。二つの駅に共通しているのは地上から地下のホームまでがとても深いにも拘わらず、登りエスカレーターは整備されているが、下りエスカレーターが少なすぎること。
両駅は海外旅行者やビジネスパーソン、そして付近の住民の利用者が多い駅だが、重くて嵩張るスーツケース、パソコンを詰め込んだビジネスバッグ、そして買物袋などを抱えた人たちには年齢に関係なく深くて長い下り階段はきつい。
しかも頼みの綱のエレベーターは目につきにくい場所にあって探すのが大変で、かりに場所が分かっても、そこまでたどり着くのが一苦労なのだ。
ああいう駅を毎日乗り降りしなくてはならない人たちの苦労が偲ばれる。